(前回「有名な先生」の続き)
「有名な先生」がおかした不備とはなんだったのか?
実は3回目、「有名な先生」が手掛けた申請については特に不備はなかった。
しかし、第一回目、そう申請人本人が申請し、不交付に終わった申請にははっきりとした不備が存在した。
申請人が不交付通知書をもって行政相談を受け、不備を指摘されたにもかかわらず、なんの釈明も修正も行わないまま申請を繰り返したことが問題とされた。
添付書類として提出した市県民税の所得・課税証明書とA社源泉徴収票にささいな齟齬があった。
所得・課税証明書の給与金額とに比べ、A社の源泉徴収票の支払金額が7万円ほど少ないのだ。
考えられる理由としては
@A社の申告あるいは源泉徴収票の作成にミスがあった。
A申請人が他の会社で働いていたが源泉徴収票を提出しなかった。
可能性が高いのはAだろう。
ところが申請人に尋ねると「その年はA社でしか働いていなかった」と断言する。
嘘をついている気配はない。
当時の住所地の市役所税務課に電話で問い合わせてみた。
むろん、個人情報であるから私が直接問い合わせることはできない。
まず申請人に電話をかけてもらい本人確認の後、私が代わるという手段をとった。
その結果、申請人が当時A社の他、B社でも働いており差額7万円強はB社から支払われ申告されていたことがわかった。
申請人にB社の名前を出すと「ああ、そういえば」とやっと思い出した。
7万円程度の給与といえば働いた期間は1〜2週程度だろう。
数年前なら忘れてしまっていてもおかしくはない。
通常なら問題にならないささいな齟齬。
しかし、入管はそこを問題にする。
入管は一つ嘘をついているとすれば、2つ、3つの嘘をついていることを疑う。
明るみに出せない不正な収入を隠しているのではないかと疑うわけだ。
さらに、申請人は行政相談で指摘された問題点を十分に理解していなかった。
所得・課税証明書の金額と源泉徴収票の金額が一致していなければならないことさえ理解していなかった。
「これは会社でもらう紙で、役所でもらう紙とちがう(だから内容が完全に一致する必要はない)」と理解していたようだ。
金額が一致していなければならないと伝えると驚いていた。
問題点がなにか理解していないのだから、問題点を相手に伝えることもできない。
私に対しても、不交付の理由について「お金が少なかったから」としか伝えられなかった。
行政相談では「所得・課税証明書の金額に比べ源泉徴収票の金額が少ない」という指摘を受けたが、「お金が少ない」という言葉だけが耳に残り、「収入が少なかったから不交付となった」と理解してしまったのだろう。
前回の申請のときにも「お金が少なかったから」としか伝えられなかったのだろう。
行政書士が直接面談すれば不審に思ったろう。
しかし、スタッフがルーティンワークとして質問しだけではわからない。
もちろん、ルーティンワーク、流れ作業でもほとんどの場合はうまくいくのだ。
ただしうまくいかない場合も確実に存在する。
2021年09月07日
ささいな齟齬
posted by 行政書士 小林 憲一 at 16:43| Comment(252)
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