2022年11月30日

相続研修会

昨日、愛知県行政書士会碧海支部主催の研修会があった。
講師は西北支部の西堀行政書士。
テーマは「相続手続のワンポイント」
相続全般の知識を体系的に解説するのではなく(受講者の多くがすでに遺産分割協議書の作成や相談などに関わった経験があり、すでに基礎的な知識を持っていることを前提)、実務家でなくてはなかなか気づかないポイントを指摘してくれるという内容だった。
印象に残った内容としては以下の点。
1 自分でも頷ける内容
岡崎市役所での書類(戸籍謄本、住民票等)の取得が難しいこと
他の市役所では委任状、代理人の身分証明書があれば十分なのに、岡崎市役所ではさらに本人の身分証明書(運転免許証など、外国人の場合は在留カード)のコピーまで要求される。
これは自分でも体験して理不尽な思いをしたことがあった(一度引き換えして本人からコピーをもらった)ので大いに頷けた。

2 勉強になった内容
@ 相続放棄した後の不動産管理責任
相続放棄したからといって管理責任が消えるわけではない。
「相続放棄をしたものは、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産に置けるのと同一の注意義務をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」(民法940条)
つまり、不動産の利用はできないのに管理責任のみ負うという不安定な立場になるわけだ。
がけ崩れなどで他の家に損害がでた場合、管理責任を問われ損害賠償請求されることもありうる。

A 農地の遺贈は農地法の許可が不要な場合と必要な場合がある
「農地を次男(相続人)に遺贈する」と遺言した場合、相続と同様に農地法の許可は不要。
しかし、「農地を孫(相続人以外)に遺贈する」と遺言した場合、農地法3条の許可が必要。

B 生命保険金が遺産となりうるケースはほとんどない
受取人が指定されている場合、遺産ではない。受取人が「相続人」とのみ記載されている場合も相続人は約款により取得するので遺産ではない。

C土地区画整理事業施工中の土地の遺産分割
相続人は従前地について所有権はあるが使用収益権はなく、仮換地(換地予定地)について所有権はないが使用収益権はある
遺言書の財産目録には従前地とともに仮換地も記載すべき
土地の評価は従前地を基準とすべき

D 外国に長期滞在している(日本に住民登録がない)日本人は住民票の代わりに「在留証明」印鑑証明書のかわりに「署名証明」を取得する。

E 古い戸籍謄本は変体仮名が使われていることもある。

F 被相続人が外国人の場合、原則として本国法が適用。ただし、本国の国際私法が日本法を準拠法と指定する場合は日本法が適用(反致、通則法41条)
例:
(1)中国
被相続人の死亡時の常居所地の法律を適用、不動産については不動産所在地法を適用(中華人民共和国渉外民事関係法律適用法31条)。日本法が適用されやすい。
(2)北朝鮮
不動産は所在地法。動産は外国に住所を有する場合は住所地法となる(北朝鮮対外民事関係法45条)。
在日コリアンの場合、日本法が適用される。
(3)ブラジル
被相続人が住所を有した国の法律に従う(1942年9月4日大統領令第4657号)。日本法が適用される。
(4)ベトナム
不動産は所在地法(ベトナム民法767条)なので日本法が適用。
(5)タイ
不動産は所在地法(仏暦2481年、法の抵触に関する法律37条)、動産の相続は被相続人がsh防止他住所の法律による(同法38条)。日本法が適用されやすい。

posted by 行政書士  小林 憲一 at 14:03| Comment(0) | 愛知県行政書士会碧海支部

2022年11月22日

短期滞在から日本人の配偶者等への資格変更が許可された

タイトル通り、短期滞在ビザからの日本人の配偶者等への在留資格変更許可申請が許可された。
申請人はフィリピン人女性。
申請期間は約二ヶ月。
在留期間更新許可の審査期間としては長めだが在留資格認定証明書交付申請に準じる審査が行われたとすれば妥当な期間。
通常、短期滞在から他の在留資格への変更は許可されない。
許可されるのは「やむを得ない特別の事情」がある場合のみである(入管法第20条第3項)。
今回、@前回の短期滞在での滞在時婚姻届を提出しており約5年にわたり婚姻状態が継続していたことAふたりの間に日本国籍の子供がいること等が「やむを得ない特別の事情」と判断されたと思われる。

短期滞在中の申請なら在留資格認定証明書交付申請の方がいいと助言したのだが(短期滞在中に在留資格認定証明書が交付されたなら証明書を添えて在留資格変更許可申請をすればいいし、短期滞在後に交付されても証明書で入国できる)、在留資格変更許可でいきたいというのが日本人配偶者の強い意思だった。

前回、平成30年にも申請はしたのだが、当時は不許可に終わった。
短期滞在中に婚姻届は提出したものの、フィリピン領事館への婚姻報告はできなかったこと、申請人が妊娠はしていたが出産はしておらず日本人配偶者との妊娠であることの証明もできなかったことから、「やむを得ない特別の事情」なしと判断されたようだ。

今回、名古屋フィリピン領事館への婚姻報告を行った。
申請人は初婚であったので、申請人の独身証明書、婚姻届の英訳などを添えれば簡単に受理された。

添付書類の婚姻証明書に代えてフィリピン領事館の婚姻報告を行った際交付された書類(内訳:婚姻報告、婚姻届概要の英訳、アポスティーユ、申請人の独身証明書、宣誓供述書)、申請人の出生証明書の原本及び和訳、さらに当職作成の理由書を添えて申請したところ、許可となった。
posted by 行政書士  小林 憲一 at 12:53| Comment(0) | 外国人ビザ